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日本人はその昔、「サウナー」だったという事実
日本人の先祖が主流としていた入浴法は温泉や湯に浸かる「温水浴」ではなく、サウナと同じ「蒸し風呂」で、その歴史は奈良時代にまで遡る。江戸中期以前には江戸の銭湯も蒸し風呂が主流だった。またサウナ発祥のフィンランドではサウナは蒸し風呂を楽しむ場としてだけでなく、裸の社交場にもなっている。その意味では日本人のお風呂文化とフィンランド人のサウナ文化には共通項が多い。日本人の先祖はみなサウナーだった。そんなふうに考えるとサウナに親近感が湧かないだろうか。5つ星の宿で昔ながらの蒸し風呂が経験できるのが鹿児島県の「指宿白水館」。江戸町人の錦絵に目を奪われる「元禄風呂」の構内に江戸蒸し風呂風の江戸石榴風呂が用意されている。千葉県鴨川温泉「鴨川館」の「ときわの湯」でも箱蒸し風呂というスチームバスが楽しめる。
ロウリュサウナ全盛時代。ロウリュサウナとは、サウナストーンに水をかけて蒸気を発生させ室内の湿度を上げることで、体感温度を上げて発汗を促す入浴法。普通の水ではなくアロマ水をかけて香りや効能を楽しむのが主流になっている。ロウリュには一定時間ごとに機械が水を噴射してロウリュウを行うオートロウリュと、自分でサウナストーンに水やアロマ水をかけるセルフロウリュがある。セルフを行う場合は、周りの方に一言かけて、静かに水をかけるなどの心配りが大切だ。
大浴場でも部屋でもロウリュの時代到来
5つ星の宿では特に北海道にロウリュサウナを導入した宿が多い。例えば「北こぶし知床ホテル&リゾート」では、オートロウリュサウナを楽しみながらオホーツク海の流氷を眺めるサウナが人気を呼ぶ。
また、登別のキャラクターの鬼をモチーフに「3つの源泉とサウナを主役にする」をコンセプトとする「鬼サウナ」を誕生させたのが「祝いの宿 登別グランドホテル」。楽しめるのはオート&セルフロウリュ。プロデューサーはエスコンフィールドにボールパークとして世界初のサウナをつくった「プロサウナー」松尾大氏で、氏は「洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス」のサウナもプロデュースしている。また、阿寒湖温泉の「あかん遊久の里鶴雅」では、360度全面が世界初の「断熱複合ガラス」のフィンランド式「ドーム型展望サウナ」を展望大浴場屋上にオープンしている。
サウナの概念を変えるとまでいわれ注目を浴びているのが、フィンランドのスモークサウナを再現する「iki」で、北海道定山渓の「ホテル鹿の湯」と福島県岳温泉の「陽日の郷あづま館」が導入している。特筆すべきは搭載された大量のサウナストーンで、ヒーターから熱エネルギーを蓄えた大量の石が遠赤外線を放ち、そこに水をかけることによってより強力な蒸気が発生し、迫力のロウリュを楽しむことができる。あづま館ではフロア全体を「岳サウナ」へとリニューアルして、あだたらの大自然を眺めるインフィニティ水風呂も併せてオープンしている。
サウナブームを受けて5つ星の宿の中にも本格的なロウリュサウナを導入する宿が増えている。客室空間でロウリュサウナを楽しめる贅沢な宿も多く、要チェックである。