人気温泉旅館ホテル250選に5回以上入選の宿 特集記事

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北海道・湯の川温泉「望楼NOGICHI函館」展望大露天風呂にて

「望楼NOGUCHI函館」展望大露天風呂

 目の前を遮るものが何もない天空の温泉から、昼間は函館の街や函館空港に離発着する飛行機を眺め、夜には漁り火が瞬く津軽海峡を眺める。歩けばノスタルジックな函館の街にはまだ知り得ないいくつもの表情がある。南茅部地域には世界文化遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成資産である史跡大船遺跡と史跡垣ノ島遺跡が点在している。垣ノ島遺跡に隣接した函館市縄文文化交流センターには北海道初の国宝「中空土偶」や出土品が展示されていて、世界遺産と国宝を一度に楽しむことができる。函館はまた幕末を熱く駆け抜けた新選組土方歳三最期の地でもある。蝦夷地に上陸した土方歳三は、湯の川に宿陣し五稜郭に向かった。その際、湯の川温泉に入った可能性が大きいともいわれている。

福島県・奥飯坂穴原温泉「かむろみの郷 吉川屋」さるあみの湯・かもしかの湯にて

吉川屋露天風呂「さるあみの湯」

 その昔、摺上川のほとりに大百足が現れ、片倉山を越えて子どもたちを食い荒らすようになり、川の女神の辨天様も困っていた。その大百足を退治したのが俵藤太で、衣類に付いた血を川で洗い流したら冷たい水が温かくなり温泉が湧き出した…。穴原に伝わる開湯伝説である。吉川屋自慢の2つの露天風呂からは自然に彩られた片倉山断崖の絶景が目を奪い、伝説の世界を思わせる。吉川屋ではその開湯伝説をもとに「かむろみプロジェクト」をスタート。「かむろみ」とは「女神」、「かむろみの郷」とは「川の女神に導かれた温泉」だ。アニメキャラクターの女神かむろみと吉川屋オリジナルキャラクターの三姉妹が、現代人のストレスを癒しの力で解放するために現世に降り立った。そんな楽しい物語も待っている。

宮城県・松島「松島大観荘」男性大浴場 判官の湯にて

松島大観荘女性露天風呂「静の湯」

 鎌倉時代の「吾妻鏡」によれば、源義経と恋仲になった静御前は、義経が実兄の頼朝と不仲になったことから追われる身となり、二人連れだって逃れる途中の奈良吉野で別れ別れとなってしまう。「義経記」には、奥州藤原秀衡のもとへと向かう義経が日本三景松島を見物する様子が記され、松島大観荘から眺める雄島に渡ったとの記述も残る。「吾妻鏡」に戻れば、義経を慕って奥州へと向かう静御前は、道半ば、郡山にたどり着いたときに義経が亡くなったことを知り、旅を終えたと記されている。その後の消息は杳として知れない。この悲恋の二人の名を冠した湯殿からは遥か水平線まで広がる松島の絶景が広がっている。静御前にも眺めてほしかった絶景である。

山梨県・富士河口湖温泉「若草の宿 丸栄」見はらし露天風呂 富士の湯にて

丸栄屋上「富士山展望台」

 「奥のほそ道」以前、江戸時代の貞享2年に江戸からふるさとの伊賀へ旅した帰路に河口湖に立ち寄った松尾芭蕉は、初の紀行文「野ざらし紀行」に「雲霧の暫時 百景をつくりけり」と詠んでいる。雲と霧が瞬間に富士山に百もの風景を生み出しているという意味である。丸栄の屋上はフォトスポットとして開放され、専用望遠鏡を備えた「富士山展望台」となっており、まさに芭蕉の句そのままの絶景を眺めることができる。芭蕉は往路の箱根で「霧しぐれ富士を見ぬ日ぞおもしろき」とも詠んでいる。富士山が見えなければがっかりするが、見えなくても富士山は富士山でそこにあると、達観したような心境が感じ取れる。丸栄の見はらし露天風呂から眺めても富士山は見えたり見えなかったり。それも一興である。

神奈川県・箱根湯本温泉「天成園」天空大露天風呂にて

天成園 天成大露天風呂

 徳川三代将軍家光の乳母、春日局を祖先とする小田原城主の家系の稲葉氏。その別荘だった「飛烟閣」を含む敷地一帯が天成園となっている。この飛烟閣を愛した与謝野晶子は「山荘へ玉簾の瀧流れ入り 客坊の灯をもてあそぶかな」と詠んでいる。棋士加藤一二三は対局中、うるさいから瀧を止めてくれと叫んだそうだが…。庭園内の玉簾の瀧の源流となっている湧水は古くから「延命の水」として親しまれ、箱根越えをする旅人に潤いと活力を与えてきた。現代でいうパワースポットである。瀧の脇の参道を登っていくと箱根神社・九頭龍神社の唯一 の分宮、玉簾神社。こちらは縁結びの神である。全長17mの「天空大露天風呂」は開放感抜群。四季の移ろいに彩られた箱根の山々を眺める心に浮かぶのは和歌か、歴史か。

岐阜県・長良川温泉「ホテルパーク」展望風呂「山の湯」「川の湯」にて

ホテルパーク展望風呂「山の湯」

 金華山岐阜城は司馬遼太郎の小説「国盗り物語」の舞台。稲葉山城と呼ばれていた頃は斎藤道三の居城であり、攻め落とした織田信長が城主となった後は岐阜城と改められ、同時に地名を岐阜として天下統一の本拠地とした。ホテルパークの「山の湯」はその金華山岐阜城に一番近い露天風呂であり、戦国ロマンも薫り立つ。また、長良川名物の鵜飼を見せることをおもてなしの手法として取り入れたのも信長である。宿の特別膳、織田家家紋入り「信長饗応膳」にも鮎料理の逸品が盛り込まれている。大阪夏の陣からの帰路に長良川を訪れた徳川家康と秀忠は鵜飼を観覧し、その後、鵜匠に様々な特権を与えたと伝わる。「川の湯」は長良川展望の大浴場。湯に浸かれば岐阜の歴史とともにあった遊久の流れが眼下に横たわっている。