秘境の湯。山の湯をめざしてケーブルカーで登っていく…。ホテルかずら橋ならではの胸ときめく瞬間である。山頂に待っているのは祖谷の雄大な絶景を眺める『天空露天風呂』。迫りくる山の気配、濃密な森の匂い、吹き上がってくる風、浮かぶ白雲…。まさに隠れ里の湯である。

願ってやまない温泉が楽しめるのは、地元産の阿波青石で造られた露天風呂。眺望遥かな展望台には『天空足湯』も備えている。肌に良く馴染む湯は美肌効果も期待できる単純硫黄泉だ。休息には昔懐かしい藁葺き屋根の「半兵衛の家」の囲炉裏端はいかがだろう。

深い峡谷や山々に遮られて往来が困難だった祖谷には食事にも独特の風習が息づく。夕食では祖谷に伝わる郷土の数々を堪能する。米が穫れなかった祖谷の暮らしの知恵から生まれた「そば米雑炊」。串に刺した蕎麦団子と豆腐と蒟蒻の姿を人形（でこ）に見立てて焼き、甘味噌だれで味わう「でこまわし」。つなぎ粉を混ぜずに作る太麺の「祖谷そば」。炭火でじっくり焼き上げる「鮎の塩焼き」などなど、いずれもが祖谷の歴史と文化を感じる献立だ。食の合間には女将の「祖谷粉挽き唄」で宴が盛り上がる。なかなかできない体験である。

平家伝説も伝わる祖谷地方。夜にはライトアップされた「かずら橋」を眺めるツアーが毎日開催されている。宿は昔懐かしいボンネットバスで案内してくれる。