特集
手づくり温泉蒸しグルメ
温泉街では源泉温度98度の温泉蒸気を利用した「蒸し場」での蒸し体験もぜひ。蒸し場の半数は観光客にも無料開放されている。食材の調達は国道沿いの「豊作市場」へ。新鮮野菜や種類豊富な椎茸、素朴な豆腐も好評だ。街のあちこちにある「蒸し場」では町の人が煮炊きを楽しんでいるから蒸し方を教えてもらえばいい。蒸し玉子やふかし芋、おこわ、野菜などなんでもお好みで。温泉街には「地獄蒸し自販機」も誕生している。名物「杖立プリン」もお忘れなく。
杖立温泉
九州の奥座敷、杖立温泉。福岡天神や福岡空港から九州産交バスの直行バスが出ている。2時間半ほどかけて到着すると、そこは湯けむりたなびく昭和レトロな温泉地。タイムスリップしたような感がある。背後に原生林や岩肌が迫る杖立川の両岸には20ほどの温泉宿が軒を連ね、迷路のように入り組んだ路地「背戸屋せどや」が待っている。歩くほどに迷うほどに街歩きの楽しさが広がる。開湯約1800年の湯治場として栄えてきた杖立温泉。泉質は弱アルカリ性の単純泉。天然保湿成分といわれる「メタケイ酸」を多く含むのが特徴だ。一度は体験したいのが昔ながらの「蒸し湯」だ。この地では「風邪を引いたらまず蒸し湯」といわれるほど蒸し湯が生活と密接に結びついている。
インスタ歓迎!湯あかりライトアップ
環境維持のため竹林の間伐、再生に取り組んでいる黒川温泉。2012年から始まった「湯あかりライトアップ」は人気の冬の風物詩になっている。伐採した竹を編んで作る「鞠灯籠」と筒状で2mの「筒灯籠」が田の原川の河原に灯る様子は幻想的で誰もがSNSに上げたがる。
黒川温泉
筑紫川支流の田の原川沿いの国道を進むと30軒ほどの 温泉宿が建ち並ぶ温泉街が突然現れる。特徴は温泉地全体 を“ひとつの温泉宿”とみなす「黒川温泉一旅館」。点在す る旅館を「離れ部屋」とみなし、旅館をつなぐ小径を「渡 り廊下」に例え、その渡り廊下で離れを行ったり来たりし ながら、温泉街の自然景観や各宿の露天風呂を楽しんでも らおうというコンセプトで、旅館や旅館組合で購入できる 「入湯手形」がパスポートだ。泉質は弱酸性の単純泉、弱 アルカリ性の単純泉、硫黄泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、 硫酸塩泉、含鉄泉、酸性泉の8種。その違いを感じながら 湯めぐりするのも楽しい。
相良三十三観音めぐり
「日本でもっとも豊かな隠れ里」。その雰囲気にじっくり浸りたいなら日本遺産にも登録されている「相良三十三観音めぐり」はいかがだろう。江戸時代に始まった巡礼で、33カ所の観音霊場を巡り終えると人吉球磨地域を1周するようになっている。めぐる順番に約束事はない。三十三観音めぐりは毎年春と秋の彼岸の頃に行われ、観音像のほとんどは併せて行われる一斉開帳日に限り拝観できる。各観音霊場の観音像には平安前期の頃のものもある。
人吉温泉
急峻な九州山地に囲まれた地の利を生かして外敵の侵入を拒み、明治維新を迎えるまで日本史上稀な「相良700年」の統治を行った人吉球磨の領主相良氏。この地に神社仏閣が数多く残るのも、球磨焼酎の醸造が許されたのも領主相良氏の民衆の心を掴むための算段だったという。そうした関係性の中で領主から民衆までが一体となったまちづくりの精神が形成され、社寺や仏像群、神楽などをともに信仰し、楽しみ、大切に守る文化が育まれた。同時に進取の精神をもって京文化などを吸収し、独自の食文化や遊戯、交通網が整えられた。温泉の歴史は明治43年から。泉質は美肌効果抜群の弱アルカリ炭酸泉で、しっとりすべすべの入浴感が人気を呼ぶ。