旅館やホテルの三大要素と言えば、施設・料理・サービス。それに加えて日本の宿の魅力を何倍にも引き上げるのが、「温泉」「浴場」です。
これからの季節、名湯に浸かれば心もカラダもリラックスでき、良い一年を迎えることができることでしょう。第12回は「風呂じまんの宿　関東編２」茨城県の宿を紹介します。

　手のひらを広げたような五つの入り江からなる五浦海岸。五浦観光ホテルは、その素晴らしい景色を一望できる北関東屈指の名宿です。岡倉天心、横山大観ら名だたる芸術家が、この地を拠点にさまざまな作品を残したことでも知られています。

　老松と奇岩に白波が打ち寄せる「海」、天心、大観ゆかりの「地」、冬のあんこう鍋をはじめさまざまな郷土の味覚が楽しめる「食」、そして自慢の「湯」が訪れた人たちを魅了します。

　「湯」で体験したいのが、別館大観荘の大浴場「大観の湯」。露天風呂は雄大な太平洋を眺めるロケーションの良さが自慢で、横山大観が描いた日本画のような海の景色に溶け込む一体感を満喫できます。内風呂も大きな窓越しに海を一望できます。

　湯は源泉温度71度、ミネラル豊富な掛け流しの天然温泉。神経痛、筋肉痛、冷え性など、さまざまな疾病に効くと評判です。

　別館大観荘には、横山大観旧別荘の離れ特別室があり、プライベートの露天風呂付き。１棟貸し切りで、親子３世代、親しい仲間との集いの場としてゆっくり過ごすのにピッタリ。もちろん、１人、２人からの利用も可能です。

　「椿（つばき）の湯」「浜菊の湯」という二つの貸し切り風呂も設置。浜菊の湯は手すりを備えるなどバリアフリー設計。体の不自由な人や高齢者も安心です。

　本館の大浴場「五浦の湯」は、木々に囲まれた庭園露天風呂と内風呂。木々の緑とゆったり流れる滝の音、そして遠くからかすかに聞こえる潮騒が、訪れた人々の心と体を癒やします。数奇屋風の屋根と足元の石畳、湯船のかたわらに立つ石灯籠も印象的です。

　内風呂は、この庭園露天風呂を大きな窓越しに眺めます。外から差し込む日の光と浴槽から昇る湯煙が、“湯情”を一層引き立たせます。

　五浦は春夏秋冬それぞれの旬の幸が、海や山から届きます。そんな旬の食材をふんだんに使った料理も自慢で、特に冬期は、五浦名物のあんこう鍋が逸品。郷土の味をたっぷりと堪能できます。