人気温泉旅館ホテル250選に5回以上入選の宿 特集記事

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日本料理指南役、現代の名工、黄綬褒章、卓越した技能を持つ料理長の席前料理

現代の名工、兵庫県「井づつや」の井上明彦料理長。日本に6人しかいない日本料理指南役でもある。

日本料理の命、「出汁」にフレンチ・イタリアン・中華などのテイストを取り入れた創作料理

 厚生労働省がその道の第一人者で日本における卓越した技能者を表彰している「現代の名工」に、5つ星の宿の料理長が名を連ねている。現代の名工でありながら、日本では数人しかいない「日本料理指南役」の重責を担っているのが、兵庫県湯村温泉の「佳泉郷井づつや」の井上明彦料理長である。かつてテレビ番組「料理の鉄人」で、中華の鉄人である陳健一氏と対決をしたことでも知られている。井上料理長はまた、農業、商業、工業などの業務に精励し、他の模範となる様な技術や事績を有する人に授与される「黄綬褒章」も受賞している。

 料理人はお客様の前には出ない「裏方の仕事」であるという概念を覆し、お客様の前に立つことを先駆けて行ってきた井上料理長。今では当たり前になった、お客様の目の前で料理をするオープンキッチンも時代を先取りする形で取り組んできた。井づつやの料理で人気を呼んでいるのが「席前料理」。今なお料理長自らがお客様の前で卵料理などを作ってくれる。「表に出たほうがお客様の反応を生で見ることができて嬉しい」と語っているように、人と人との縁を大切に、遊び心のある料理と交流で楽しい食のひとときを盛り上げてくれる。

姉妹館の両料理長が現代の名工、黄綬褒章を受賞。こんぴら温泉郷きっての美食宿

香川県「紅梅亭」現代の名工、武田和史料理長

「紅梅亭」の名物料理、熱した石で焼いて楽しむ山海宝楽焼

季節感を忠実に守り、一期一会の気持ちで創作する会席料理

 同じく栄誉ある「現代の名工」と「黄綬褒章」を姉妹館2館の料理長が受賞しているのが、香川県こんぴら温泉郷の「紅梅亭」と「琴平グランドホテル桜の抄」である。紅梅亭の武田和史料理長は、2013年のエディンバラ日本国領事館及び2014年のエルサルバドル日本国大使館での和食  PRイベントをはじめ、農林水産大臣より任命された「日本食普及の親善大使」として日本料理の繊細さやすばらしさを世界に発信し、各界から高く評価されている。紅梅亭の前身は瀬戸内海の食材を駆使した料理で名を馳せた割烹丸忠。その雰囲気を現代に再現した「割烹ダイニング丸忠」は、300年前の梁を用いた木造建築のオーベルジュ。往時を偲ばせる食空間で武田料理長が臨場感たっぷりに創作するのは、昔ながらの手法も取り入れた料理の数々。名物「山海宝楽焼」や「醤豆腐鍋」はまさに絶品である。また、桜の抄の山口和孝料理長が創作するのは、四季折々の食材を使った伝統的な会席料理だけでなく、中華や洋食の要素も取り入れた新しい会席料理だ。歌舞伎の世界に見立てた展望レストラン「花見世厨房ゐきり」で、歌舞伎役者さながらのライブ感とともに味わう料理も納得の旨さである。

香川県「桜の抄」の現代の名工、山口和孝料理長

「桜の抄」の展望レストラン「花見世厨房ゐきり」

フレンチ界の名誉ある称号「ディシプル」が活躍する5つ星の宿

山形県「天童ホテル」二戸正西洋料理長

鹿児島県「SHIROYAMA HOTEL kagoshima」総料理長の徳重慎一郎氏。2017年6月よりエスコフィエ協会ディシプル会員

 通称「ディシプル」と呼ばれるが、正式名は「ディシプル・ド・オーギュスト・エスコフィエ」。一般社団法人日本エスコフィエ協会によると「 ディシプルとは、レストラン経営と料理考案・レシピ集の著述を通じて伝統的なフランス料理の大衆化・革新に貢献したことで知られるオーギュスト・エスコフィエの弟子を意味し、日本エスコフィエ協会においては正会員の中でもより重い責任と名誉を有する資格」とある。この「ディシプル」が繰り出す至上の美食を満喫できるのも5つ星の宿の魅力である。

 山形県天童温泉「美味求真の宿 天童ホテル」は、日本料理の武田信太郎料理長と西洋料理の「ディシプル」二戸正料理長、中華料理の漆山智昭料理長の3人のコラボレーションによる折衷会席料理で人気を呼ぶ。天童エリア最大規模の宿にあって、山形の風土に育まれた豊かな食材を用いて創作される料理は旅行客はもちろん、企業団体からも高い評価を受けている。二戸料理長からは「オ−ギュスト・エスコフィエの真髄に基づき、フランス料理の伝統を重んじた料理づくり、また同時に、現代に合った料理へアレンジした料理づくりを心掛けている。とくに会席料理の一品で提供する上では、日本料理との調和を大切にしている」とのコメントをいただいている。

5つ星の宿では、神奈川県宮ノ下温泉「富士屋ホテル」の小池智宏料理長、山梨県富士山温泉「ホテル鐘山苑」の宮下隆昭料理長、鹿児島県城山の「SHIROYAMA HOTEL kagoshima」の徳重慎一郎総料理長も名誉ある「ディシプル」の称号を持つ名シェフである。