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火山国日本では、ほとんどが火山性の温泉
温泉は地中にしみ込んだ雨や雪が、高温のマグマや高温岩体によって温められ、再び地上に出てきた「循環水」であることが近年の調査でわかってきたという。
温泉は「火山性」と「非火山性」に大別され、非火山性の温泉はさらに「深層地下水型」と「化石海水型」に分類される。火山大国日本ではそのほとんどが高温の地下マグマによって温められた火山性の温泉である。
非火山性のめずらしい温泉として世界的に知られているのが日本の三古湯の一つ、有馬温泉。海底近くでフィリピン海プレートが陸側のプレートに沈み込んだときに海水を一緒に巻き込んでいく。地下60㎞の地中まで沈み込むとマントルに熱せられ、温泉となって地表に向かって熱水が上部に湧き出す。その場所が有馬だ。
火山性の温泉が楽しめるのが、青森県鰺ヶ沢温泉の大正ロマンの宿「ホテルグランメール山海荘」だ。岩木山の火山帯に位置する鰺ヶ沢温泉。宿の温泉は、はるか昔に地中に閉じ込められた海水が三十万年の時を経て熟成した恵みの湯。化石海水を含んだ温泉は塩分濃度が高く、保温と保湿に優れ、湯冷めしにくい特徴があり、天然のタラソテラピー(海洋療法)としても人気を呼ぶ。
「化石海水」が「お宝」の一軒宿や、焼岳の麓へ
5つ星の宿の中には、そこに行かなければ絶対に体験できない固有の温泉がある。
例えば、富山県魚津の一軒宿「金太郎温泉 光風閣」の温泉は、食塩泉と硫黄泉が混合した国内でもめずらしい泉質の温泉だ。温泉の成分にはナトリウムやカルシウムなど海水起源の塩化物や地層に溶け出した硫酸塩由来の硫化水素を豊富に含む。敷地内に入れば硫黄の香りが立ちこめ、源泉掛け流しの湯に浸かれば塩分によって身体が芯から温まる。
金太郎温泉は富山県の全源泉の約68%を占める岩稲累層とその上部堆積地層に含まれる化石海水で、それが地熱によって温泉化して噴き出したもの。大地の鼓動までも感じる温泉である。
同様の化石海水を含んだ温泉が楽しめるのが、兵庫県日和山温泉の一軒宿「ホテル金波楼」だ。ホテル眼下の日和山海岸は日本海の形成中~形成後の火山活動などによりもたらされた溶岩類や火砕流堆積物からなる磯浜で、海岸西部には流紋岩の大岩壁が屹立している。山陰海岸ジオパーク特有の景勝だ。大地からの恵みは2万年前の地層から湧出する化石海水。高濃度のナトリウム成分で一度身体が温まると温浴感が長続きするため「熱の湯」という別名もある。
火山性の温泉で特筆したいのが、現在も活動を続けている焼岳火山を熱源とする奥飛騨温泉郷だ。どの温泉地でも高温の温泉が湧出している。焼岳の麓、新平湯温泉の最奥に位置する「奥飛騨ガーデンホテル焼岳」で満喫できるのは、約3億6千万年前の海底地層が隆起した地層から湧き上がる国内唯一の超深層水温泉。温泉に含まれる硫黄成分が空気に触れて美しいエメラルドグリーンに変わるのも奥飛騨温泉郷ではこの宿だけだそうである。宿が「うぐいすの湯」と名付けた源泉。身を浸せば初めての経験になる。