人気温泉旅館ホテル250選に5回以上入選の宿 特集記事

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源泉掛け流しと、源泉100%掛け流しはまったく異なるもの

 「源泉」とは、地表に湧き出た状態の温泉。湧き出し方も、地表から自然に温泉が湧き出る「自然湧出あるいは自噴」と、ボーリングによって源泉を掘り当て水圧を掛けて噴出させる「採掘自噴」、掘り当てた源泉をポンプで吸い上げる「掘削動力揚揚」の3種類がある。5つ星の宿の代表的なところでは群馬県万座温泉の「日進舘」や長崎県雲仙温泉の「ゆやど雲仙新湯」が自噴温泉だ。動力を用いずともどんどん源泉が湧き上がっている。

長崎県雲仙温泉「ゆやど雲仙新湯」の露天風呂付客室「月庭」

群馬県草津温泉「草津望雲」の「遊山の湯」内風呂

群馬県水上温泉「源泉湯の宿 松乃井」の貸切露天風呂「カンテラの湯」

 「源泉掛け流し」とは、加水も加温もしない生のままの源泉をそのまま湯船にあふれさせ、あふれた源泉を再利用しないことをいう。例えば、長崎県雲仙温泉の「雲仙福田屋」の「売り」が、白濁硫黄泉の源泉100%掛け流し温泉。メタケイ酸も多く含まれ、にごり湯のキリッとした温泉でシャキッと元気を取り戻せる。また、熊本県杖立温泉の「ひぜんや」では男女それぞれ五つの浴槽がある「吉祥の湯」で源泉100%源泉掛け流し温泉を堪能できる。

熊本県杖立温泉「ひぜんやの吉祥の湯」

 一般的な認識では、源泉掛け流しという概念には源泉の成分が変わらない程度の加水をすることや、もともと低温の源泉を入浴に適した温度へと加熱することも含まれる。温泉法でもそれが認定されているため、それも正真正銘の温泉といえる。温泉地全体で源泉を共有する場合は、源泉側で加水して各宿に供給するケースも少なくない。また、宿側でも水道水での加水ではなく敷地内に湧き上がる清水を加水して、源泉を最大限に楽しんでもらおうと努力を重ねている宿もある。福島県土湯温泉の「水織音の宿 山水荘」などがそれにあたる。

宮城県秋保温泉「伝承千年の宿 佐勘」、名取川の渓流沿いの源泉掛け流し露天風呂「河原の湯」

 多くの旅館の場合、大浴場や露天風呂に源泉を注いだとしても、数多くの人が浸かることで湯が汚れたり浴槽の中に汚れが溜まることがあるため、衛生上の対策としてやむなくその湯を循環ろ過し、塩素消毒をして再利用している。すばらしい泉質の温泉を持つ宿であっても、源泉掛け流しと大きくアピールできない理由である。そうした宿は貸切露天風呂や一部客室に源泉掛け流し温泉を配するケースが多い。

 それに対して、源泉100掛け流しとは、源泉に対していっさいの調整をしないことを示す。加水・加熱なし、循環ろ過に伴う塩素消毒もしないピュアな状態の源泉である。静岡県熱海温泉「古屋旅館」では美肌効果に優れた源泉「清左衛門の湯」を全館全室の風呂に独立した配管で掛け流している。

静岡県熱海温泉「古屋旅館」の源泉室内露天風呂付客室(一例)

古屋旅館の温泉は全て源泉「清左衛門」からの100%源泉掛け流し

温泉を直接汲み上げ、源泉から浴槽までの配管距離を緻密に計算し、源泉口で約90度のお湯が浴槽に注ぎこまれる時点では、入浴に丁度良い温度になるよう設計されている