慶応四年創業の大和屋本店。数寄屋造りや聚楽壁など日本の伝統建築にこだわった空間が凜と佇み、老舗宿の想いを込めた能楽堂「千寿殿」や世阿彌の風姿花伝に心を重ねたおもてなしとも相まってやすらぎに満ちた滞在を叶えている。
　全館刷新に伴う平成八年の再創業を機にホテルの機能性やサービスも加えた客室は、過度な華美を省いた洗練の意匠と職人の技による「数寄屋造りの和室」と「シンプルモダンな洋室」の構成。主室13畳、次の間７畳、檜造り風呂からなる「スイート和室」は78㎡タイプとベッド付きタイプ。極上品だけを備えた空間だ。ベッド付タイプは次の間に英国王室御用達のスランバーランド社製ダブルベッドを配置している。スタンダード和室も部屋ごとに天井や格子など意匠が異なる特別空間である。
　男女の湯殿には「道後温泉からの引き湯」を堪能できる内湯と露天風呂が用意されている。楽しみは無料の「大和屋台」。樽から自分で注げる日本酒ＢＡＲと、子どもが喜ぶ駄菓子ＢＡＲが湯上がりを楽しく演出してくれる。

　夕食は瀬戸内の旬の素材を伊予郷土の味わいで仕上げた大和屋本店伝統の和食会席を堪能する。別注料理を追加して自分好みの料理に仕立てることもできる。
　おすすめは贅沢な『伊予牛「絹の味」鉄板焼きと瀬戸内真鯛』コース。愛媛を代表する魚「真鯛」を使った料理の数々と、絹のようにきめ細かな味わいが特徴のブランド牛「伊予牛 絹の味」を鉄板焼きで堪能できる。食事は数寄屋造りの個室をそれぞれ７室備えた２つの料亭や能舞台を眺めるレストランに用意される。
　朝食は愛媛県内や瀬戸内各地の美味しいものを集めた約１００品目の「瀬戸内ごちそうビュッフェ」。自分でつくる海鮮丼や愛媛の郷土料理じゃこ天、大和屋特製「牛すじスープカレー」も楽しめる。
　旅の土産話になるのが「蛇口みかんジュース」。愛媛県では蛇口をひねるとみかんジュースが出てくる…。そんなジョークが、その面白さから都市伝説として全国に広まり、本当に創ってしまったのが大和屋本店。旅の疲れを癒す愛媛道後ならではのとっておき体験だ。
　滞在中はぜひ、日本建築様式の優美な外観と総檜造りの能舞台「千寿殿」へ。足袋を履いて神聖な能舞台の上で写真撮影ができる能舞台体験も人気を呼んでいる。猿楽師世阿彌の世界にも心を寄せる特別な体験である。