「白骨」の名を全国に知らしめたのが中里介山の「大菩薩峠」で、秘湯の趣も添えていつしか白骨温泉と定着した。それ以前は「白船」と呼ばれていた地。宿名に残る。
　温泉は乗鞍岳と上高地の山間を泉源として霊泉的な効能を今に伝える湯。約六百年の歴史を持つ。江戸時代には「三日入れば、三年風邪をひかない」と多くの湯治客を集めた。泉質は胃腸の病に効能がある天然の「硫化水素泉」。浸かって良し、飲んで良しの温泉で、湧出量の多さと泉質のすばらしさから昭和49年には「国民保養温泉地」に指定されている。
　宿で満喫できるもうひとつの温泉が石鹸のような働きのある「炭酸水素塩泉」。２種類の源泉を楽しめるのは白骨でこの宿だけである。客室は渓谷風景を一望するスタンダードな和室をはじめ、広さと眺めが異なる６タイプ。１２・５畳と８畳の和室を備え10、人で泊まれる「角部屋和室」はグループ旅行などにも最適だ。
　モダンな雰囲気で選ぶなら装いを刷新した「洋室スーペリアツインベッドルーム」がいい。広さ39㎡の空間には快適な眠りを誘うシモンズ社製のダブルベッドとセミダブルベッドが設置されている。
　女性３人での滞在にも最適だ

　誰もが絶賛するのが料理の誂え。コース一品一品に趣向が凝らされている。信州サーモンや清流で育った岩魚なども味わえる。源泉を使った料理は温泉粥コロッケや、宿の秘伝の出汁で楽しむ「豆乳仕立ての白船鍋」。この宿でしか味わえない逸品だ。朝食の温泉粥は胃腸の調子が調う優しいひと品。中庭を眺めながらゆったりと食事を楽しむことができる小上がりの掘り炬燵式の食事処、椅子席のダイニングルーム、中宴会場などで提供される。
　山深く分け入って憩う秘湯の宿。言い伝えどおり三日泊まって楽しむのもいい。