「白骨」の名を広く知らしめたのが中里介山の「大菩薩峠」であり、秘湯の趣も添えていつしか白骨温泉と定着した。それ以前は「白船」と呼ばれていた地。宿名に残る。温泉は乗鞍岳と上高地の山間を泉源として霊泉的な効能を今に伝える湯。約六百年の歴史を持つ。江戸時代には「三日入れば、三年風邪をひかない」と多くの湯治客を集めた。湧出量と泉質などのすばらしさから昭和49年には「国民保養温泉地」にも指定されている。泉質は胃腸の病に良いことでも知られる天然の硫化水素泉。まさに浸かって良し、飲んで良しの温泉である。

硫化水素泉の源泉を満喫できるのが展望露天風呂だ。そこだけ山に守られているような岩風呂が待っている。周囲はしんと静まりかえり、聞こえるのは流れる湯の音と木々の葉音だけ。まさに秘湯そのものだ。山々が紅葉に染まる秋や真冬の雪景色の風情が特にすばらしく、季節を変えて訪れるのもいい。宿ではもうひとつの源泉、炭酸水素塩泉を大きな窓が印象的な男女大浴場内湯と家族風呂に引いている。冷え性にも効くから寒い時期にはもってこいの温泉だ。白骨温泉で2種類の源泉を楽しめるのはこの宿だけである。

客室は和室を中心に様々な部屋が揃う。10人で泊まれる角部屋も備えている。モダンな雰囲気で選ぶなら装いを刷新した洋室スーペリアルーム。広さ39㎡でシモンズ社製のダブルベッドとセミダブルベッドが設置され、ゆったりと過ごすことができる。その他にスタンダードツインルームもある。