大正6年創業の老舗宿、旅館花屋。約6500坪の敷地に点在する1500坪の木造建築の約8割が「文化庁登録有形文化財」に登録されている。創業当時の趣を大切にしながら慎重に修繕や増築を重ね、大切に守られてきた。館内をめぐれば随所に置かれた調度が大正浪漫へと誘う。遊郭から移築した天井絵や一刀彫りの化粧柱、精緻な細工の欄間など、宮大工たちの繊細な技や遊び心も垣間見ることができる。いくつもの棟を繋ぐ渡り廊下を歩めば、自然が描き出す優しい情景にも心奪われる。

そして全国でも稀少な武家屋敷への宿泊体験ができるのが『桜御殿』。平成28年に解体された上田藩武家屋敷の建材や建具を移築･改装し、往時の様式を忠実に踏襲して再現されている。式台玄関や書院座敷、舞良戸という武家屋敷特有の造作など知的好奇心が刺激される空間である。

湯殿は高く優雅なドーム型天井とステンドグラスが美しい大理石風呂と大きなガラス張りの若草風呂、緑の木々に囲まれた露天風呂。硫黄の香漂う源泉掛け流し100％の醍醐味に浸かれる。食事はクラシカルな食事会場や個室食事処、客室で。こだわりの会席料理を非日常空間で堪能するひとときは格別だ。日本文化の伝統と歴史に思いを馳せて、日常とは違う時間を楽しむ。それが正しい過ごし方だと宿主が言う。