庄川狭は全長20㎞ほどの峡谷。大牧温泉観光旅館へは小牧ダムから庄川観光船に乗り込み、峡谷を縫うように蛇行しながら上っていく。目を奪われるのはエメラルドグリーンに輝く湖面や両岸の絶景。時にはカモシカも姿を現す。時間を、時代を遡っていくような感覚。まさに秘境である。冬には水墨画さながらの雪景色をめざして、訪日外国人客も殺到する。クルーズを楽しむこと30分。岸壁に張り付くような一軒宿に到着する。船着き場から階段を登れば入口だ。
　８４０年ほど前に平家の武将が発見した湯。現在の源泉は庄川の中心地から湧き上がる庄川清流温泉で、湧出量は毎分３６０リットル。その豊かな天然温泉に癒されながら四季折々の自然が織りなす渓谷美を眺め、何もしない贅沢を味わうのが最大の楽しみである。庄川に釣り糸を垂らすのも一興だ。
　渓谷美を眺める客室は川側の８名収容の和室やツインベッド付和洋室が中心で、源泉掛け流しは露天風呂付和室と２０５㎡もの最上級特別室。ミシュランガイドに名を連ねる宿。快適さも秀逸である。
　夕食は天然の生け簀、富山湾からの海の幸や富山の山の幸を味わう会席料理で基本、特上、特別の３コースから。極上の美食が揃う。

　湯の憩いはダム湖の底に湧き上がる効能豊かな温泉と庄川沿いの深い自然のやすらぎとともに。男女別大浴場へは館内から畳続き。ワイドガラス越しに切り立った断崖やゆったりと流れる水面を眺めながらくつろげる。女性には湖面に一番近い中浴場、男性には檜で造られたテラス風呂も用意されている。泉温58度の源泉ゆえ、湯船を満たすときだけは加水されるが、基本的には源泉掛け流しだ。
　原生林に抱かれた露天風呂が何よりもすばらしい。女性用は大きな湯船と岩のくぼみに湯を張った小さな湯舟で、人目を気にせず源泉掛け流しに浴せる。男性用は開放的な岩組の露天風呂で野趣にあふれ、大自然との一体感を心ゆくまで満喫できる。湖底から湧く高温の源泉は肌ざわりが軟らかく、体が芯から温まる。