縄文時代に湯が湧き出していたという湯田中。文献に残る開湯は約一三五〇年前の天智天皇の時代で、温泉は長命長寿を意味する「養遐齢（ようかれい）」と命名され、病を癒し、心身を養生する霊験あらたかな湯治場として親しまれてきた。湯田中に縁の深い俳人一茶も、「湯けぶりのふはふは蝶もふはり哉」などの名句を残している。
　美湯の宿は温泉力の宿。大浴場や露天風呂、屋上貸切露天風呂、特別室２室で満喫できるのは、正真正銘、加水・加温なしの「源泉掛け流し１００％」の温泉だ。美湯の宿では、熱交換器に高温の源泉を通すと湯が適温になることを利用して加水せずに源泉１００％掛け流しを実現している。
　温泉は３つの源泉をオリジナルブレンドした温泉で、湯田中の宿で唯一、長野県が独自に定める温泉規格にも認定されている。毎年、認定の更新があり、今も厳正に基準が守られている。
　それだけではない。温泉は湯守に托して徹底管理し、季節や天候、その日の気温などによっても刻々と変化する温泉の状態を把握しながら常に最適の湯温と湯量で入浴できるように配慮している。湯守は毎日の泉質状態を記帳することも欠かさない。館名どおり、湯が美しく磨かれているのだ。
　入浴方法も工夫されている。大浴場はジャグジーの湯船。温泉をやわらかくするとともに泡状の温泉を直接身体に当てることでマッサージ効果を促す。原理は草津温泉の湯もみと同じだ。屋上には日中は季節が移ろう山景色、夜には満天の星を眺める貸切露天風呂も用意されている。この湯をめざして多くの温泉マニアも訪れるそうである

　客室は川側と山側の景色を眺める眺望和室を中心に、ツインの洋室と８畳和室の特別和洋室、グループや家族で利用できる特別和室などバラエティに富んだタイプが用意されている。
　明るく清潔な館内が気持ち良い。客室へ案内されると入口に女将直筆の一茶の句のメッセージがさりげなく用意され宿の細やかな気遣いも伝わってくる。

　夕食は信州の味覚を味わう「旬感会席」。千曲川の清流で育った天然の川魚、新鮮な野菜など、信州の旬を大切に山の幸も取り入れた彩り鮮やかな料理は滋養もたっぷりだ。
　使用されている信州プレミアム牛は長野県独自の「あたらしい美味しさの基準」をクリアした香りと食感に優れたトップブランドで、好みの調理法がリクエストできる。種木のままで出てくる名産しいたけ焼も美湯の宿ならではのごちそうだ。種木を持ち帰り、上手に室内栽培をすれば自宅でも料理に使えるという。その方法も教えてくれる。旬の時期には信州の季節の天ぷら盛り合わせや川魚の塩焼きなどもリクエストできる。

　食後はモダンなラウンジで飲物片手にくつろぐのもいい。フロント脇のラウンジは眼下に湯けむりが上がる街や夜間瀬川を眺めるコミュニティスペース。朝の憩いにも最適だ。
　魅力的な観光スポットが多い湯田中。手軽な散策には、共同浴場への外湯めぐりや一茶の15の句碑が建つ「一茶の散歩道」はいかがだろう。渋温泉やサルの入浴で知られる地獄谷野猿公苑も身近だ。
　帰路には北斎記念館や北斎生涯最大の作品となった天井画「八方睨み鳳凰図」で知られる岩松院などが点在する小布施町、蔵の街須坂、長野の善光寺詣なども楽しめる。どこに立ち寄ってみようかとスタッフに気軽に相談してみるのもいい。