日本屈指の高熱温泉が湧き上がる湯村温泉。朝野家の5つの自家源泉からも、毎秒430リットル、98.4度の高熱温泉が自然湧出している。美肌成分に優れた温泉だ。

　朝野家ではその天然温泉に加水することなく、4つのタンクで徐々に湯温を下げて全館全室に掛け流している。このとびきりの温泉を贅沢に楽しめるのが檜の香あふれる大浴場と風情豊かな露天風呂を備えた「彦星」と「織姫」だ。

　「彦星」には大きな水車が目を奪い、「織姫」には7mの高さから流れ落ちる湯滝や樹齢千二百年の檜をくり抜いた湯船を備え、湯の味わいもひときわだ。露天風呂地下には地熱を利用した低温サウナも用意されている。

　客室は露天風呂付客室が中心だが、特筆したいのが2023年に誕生した露天風呂付の「大人の隠れ家」New ASANOYA Style 湯籠里（ゆこもり）だ。

　約90㎡のスイート和洋室3室と、約70㎡のエグゼクティブ和洋室1室、約45㎡のデラックスツインが各1室。いずれも隣接したダイニングルームで部屋食が楽しめ、室内には大型スマートテレビや最新のスマートテーブルを備え、まさにお籠もりに最適な空間となっている。

　日本海を間近に控えた土地柄。夕食は四季折々の旬の食材を最も美味しい状態で提供することと、可能な限り手作りすることにこだわった和風会席料理を個室食事処で堪能する。

　朝引きの一番出汁を使用し、添加物を一切使用せず、素材本来の味を十分に引き出した料理の数々が、温かいもの冷たいもの、それぞれ最高の状態で運ばれてくる。新鮮な食材が手に入れば、臨機応変に料理内容を変更して美食に仕立ててくれる。目の前で調理した出来たてを味わう「席前料理」も期待通りの旨さだ。

　冬の王様・松葉ガニも料理長が水揚げ日本一の浜坂漁港に出向いて競り落とした最高品質のブランド蟹を最良の調理法で提供してくれる。別注料理では但馬牛や鮑、のどぐろなどもおすすめしたい。

　朝食は自家謹製の濃厚豆乳を使った汲み豆腐や地野菜のサラダ、板場手作りの出汁巻き卵などの和食膳を満喫できる。

　朝野家のおもてなしは、茶道・華道・香道の三道に学んだ一期一会の心。到着すれば心からの出迎えとほっと落ち着く抹茶の心遣い。館内には焚きこめられた香が漂い、日本文化が馥郁と薫る。客室には煎茶とほうじ茶、玄米茶の用意…。流れるように和のやすらぎへと導かれる旅時間。温泉の魅力とともに、日本の宿の心息づくおもてなしにも深く癒される。