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政宗の気概、伊達文化鑑賞
奥国分寺薬師堂」や仙台に移築した「大崎八幡宮」、松島の「瑞巌寺」で見ることができるのは、畿内から呼び寄せた当代一流の技術者による手の込んだ彫刻や極彩色からなる装飾性豊かな建造物、金地に色彩豊かな濃絵で描かれた障壁画など桃山文化を取り入れた豪壮華麗な手法だ。仙台市博物館では政宗の美意識を感じる「黒漆五枚胴具足 兜・小具足付」や、南蛮文化や西洋社会への関心も感じ取れる慶長遣欧使節関係資料「支倉常長肖像画」も鑑賞できる。
都文化に憧れた政宗に反して、都人たちは遠いみちのくを憧れの地として「歌枕の地」仙台や松島を訪れ、数多くの歌を詠んでいる。その成果を自分の目で確かめようとしたのが松尾芭蕉で、松島や陸奥国分寺薬師堂などを訪れている。それをまとめたものが「おくのほそ道」である。ご存知だろうか。このストーリーは日本遺産「政宗が育んだ伊達文化」からの引用だが、宮城県への旅を通りすがりの観光にしてほしくないという観点からまとめてみた。「じっくり見る観光」、その後には政宗を癒した湯どころでの心休まる時間が待っている。
秋保温泉+αの旅提案
松島湾内外に浮かぶ260余りある島々の総称で 日本三景のひとつ。松島湾周囲の松島丘陵や島の 高台には「松島四大観」と呼ばれる4つの景勝ス ポット「壮観・麗観・幽観・偉観」がある。古く から月の名所として知られ、多くの歌に詠まれて きた。伊達政宗ゆかりの名所旧跡は、本堂と庫裡 が国宝指定の瑞巌寺や五大堂。楽しみは大型遊覧 船での松島湾めぐり。乗り場までは最寄りのJR 松島海岸駅から徒歩約7分と、アクセスも抜群だ。
南三陸温泉
温泉は宮城県内では珍しい太平洋沿岸に湧出する地下2,000mから湧出する深層天然温泉。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物泉。目の前にコバルトブルーの大海原と水平線を望む絶好のロケーション。眼下にはラムサール条約に登録された志津川湾で良質な漁場が多い。藤原秀衡・秀衡の四男高衡にゆかりのある地。中尊寺金色堂で使われた金の多くはこの地で産出している。「ホテル観洋」所有の「高野会館」や阿部長商店創業者宅の「命のらせん階段」など東日本大震災の震災伝承遺構が保存・公開され、震災を風化させないための様々な活動が行われている。
秋保温泉
仙台市から車でわずか20分、仙台の奥座敷として親しまれる温泉地。泉質は塩化物泉、ナトリウム・カルシウム-塩化物泉ほか。1500年以上もの歴史を誇り、伊達政宗が癒しを求めた温泉地としても名高く、伊達家の入浴場が置かれていた。
温泉街は名取川の河岸段丘の上に広がり、足を延ばせば「秋保大滝」や「磊々峡(らいらいきょう)」などダイナミックな滝や渓谷の風景を目の当たりにできる。磊々峡は覗橋を中心に約1㎞に渡る峡谷で、名取川の浸食で削られた奇岩怪石が独特の風景を造り出している。約650mの遊歩道からは人の顔のような「奇面巌」や、途中で3方に分岐する「三筋滝」など唯一無二の景色を眺めることができる。
鳴子温泉
江戸時代は出羽・羽後両街道の要所で、尿前・鍛冶谷沢・中山・鬼首に宿駅があって玉造四駅として栄えた。 宿場の賑わいは消えたが、尿前の関から山形県の境田までの約5.2kmがおくのほそ道遊歩道として整備され、 天然林の山道を散策することができる。鳴子温泉郷は鳴子温泉、東鳴子温泉、川渡温泉、中山平温泉、鬼首温泉から構成され、 日本の泉質10種の9種が湧き上がっている。源泉数は370本以上。伊達政宗の入湯記録も残る。
鎌先温泉
南蔵王の不忘山麓に位置する温泉地。発見は応永35年(1428年)。江戸時代の諸国温泉番付には東の前頭として紹介され、特に傷に効く「奥羽の薬湯」として親しまれてきた。泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。伊達政宗も入湯している。白石城北、三の丸外堀にあたる沢端川に面した後小路には宮城県指定文化財の片倉家中武家屋敷があり、周辺は城下町の風情にあふれる。この片倉家中武家屋敷を含む白石城下七箇寺めぐりも楽しめる。
作並温泉
仙台市街地から車で約40分。緑豊かな山中に渓谷のせせらぎが響き渡る温泉街が佇んでいる。歴代仙台藩主の隠し湯と伝えられる作並温泉。泉質は単純泉。周囲には景勝地「鳳鳴四十八滝や大倉川渓谷」、名匠が伝える工芸品「こけし」、素材の味を堪能するグルメなど多彩なスポットが点在する。少し足を伸ばせば山形県の「山寺」へもアクセス可能だ。
大震災遺構を見て、防災や減災を学ぶ
写真提供:宮城県観光戦略課