５つ星の宿には、バイキングあるいはビュッフェによる多種多様なメニューの料理の提供だけでなく、食空間そのものをエンターティンメント空間にまで変えて、食の魅力を最大級に演出している宿がある。

　本誌には掲載されていないが、大分県別府八湯の「杉乃井ホテル」のレストラン「シーダパレス」にはただただ圧倒される。店内はまるでイタリア・ナポリの街並みを思わせ、開放感あふれる店内には洋食・中華を中心に、キッズメニュー、スイーツなど、ビュッフェ形式のメニューがずらりと並ぶ。世界の料理とお酒のマリアージュを楽しんでいただきたいという思いから飲み放題も用意されている。もちろん料金はディナー料金に含まれている。

　また、岩手県花巻の「ホテル志戸平」では、「エンターティンメント×ビュッフェ」と名打ち、シェフたちがパフォーマンスに磨きをかけた非日常な食事体験を大いにアピールしている。大きな木を模した内装のライブキッチンの出来たて料理が大人気だ。大人だけでなく、キッズ専用の料理台「ＭＯＲＩ×ＭＯＲＩキッズコーナー」もあって家族みんなで楽しめる。

　本誌掲載宿では栃木県鬼怒川温泉の「あさや」にご注目いただきたい。バイキング大賞経験のある宿。「あさやのブッフェ」はもうひとつの固有名詞にもなっていて、バイキングを目的に訪れるお客様も多いと聞く。あさやでは食の演出のさらなる充実に向けて会場となるレストランを大リニューアル。新たに誕生した「ＡＳＡＹＡ ＧＡＲＤＥＮ」のライブキッチンでは音や香り、炎、料理人たちの躍動する様子などが五感を刺激し、もう一皿もう一皿と手が伸びる。夕食のメニューは彩り豊かなサラダバーやデザートコーナーも含めて100種以上。料理の彩りに華やぐ室内の雰囲気も夕餉のひとときを美味しさいっぱいに盛り上げている。

　また、食材豊富な北海道の魅力をヨーロッパのマルシェさながらのレストランで楽しめるのが、札幌の奥座敷、定山渓温泉の「定山渓万世閣ホテルミリオーネ」だ。石窯焼ピッツァ、エイジングビーフステーキ、握り寿司などは２か所あるライブキッチンで料理人たちが腕を振るう。約80種の和洋中料理だけでなく、「彩・食・健・美」をテーマにした３カ月ごとの季節限定料理も人気を呼んでいる。５つ星の宿にはこの他にも独自の食の演出を試みている宿が多い。ぜひ検討を重ねていただきたい。

　正式には、バイキングとは決まった金額で好きなものを自由に選んで食べられるスタイルであり、ビュッフェとは自由に選べるセルフ形式で、取った料理の分だけ支払うスタイルだが、日本の宿ではバイキングもビュッフェも同じと考えていい。