オーガニックとエコロジカルを追求したデザイン性の高い宿泊施設をめぐる「サステナブルツーリズム」の人気が高まっている。日々の活動や行動が自然環境に与えるインパクトを最小限に抑えるように配慮し、接続可能な開発に積極的に取り組んでいるのがルレ・エ・シャトー（Relais & Châteaux）である。この名称をご存知の方も少なくないだろう。1954年にフランスで発足した一流のホテル、レストランで構成される世界的な非営利会員組織で、創業当時より５Ｃの基準による厳格な審査をクリアしたホテルとレストランのみに加盟を認めている。入会後も３年に１度の定期覆面審査が行われ、審査結果によっては警告を経て除名となる場合があるため、常に高いクオリティを維持することが求められている。

　世界では約540軒、日本でも20軒のホテル・レストランが加盟している。５つ星の宿で加盟しているのは長野県扉温泉「明神館」、群馬県水上温泉郷谷川温泉「別邸仙寿庵」、神奈川県強羅温泉「強羅花壇」、静岡県修善寺温泉「あさば」、兵庫県城崎温泉「西村屋本館」の５軒のみである。

　耳なじみがないかもしれないが、観光協会でサステナブルな国際認証として高い評価を得ているのがグリーンキー（Ｇｒｅｅｎ Ｋｅｙ）で、2023年時点で世界3,700施設以上、日本国内では４施設が認証を取得している。ルレ・エ・シャトーとともに認証されているのが、明神館と別邸仙寿庵である。

　グリーンキーは世界持続可能観光協議会（ＧＳＴＣ）が策定したサステナブルツーリズムのための国際基準によって管理されている。グリーンキーが公開している評価項目は、スタッフの意識、環境マネージメント、ゲストへの周知・情報提供、水資源、環境に配慮したクリーニング・洗濯、環境と地域に配慮した食べ物と飲物、ゴミの分別やコンポスティング、組織の運営体制、施設内の宿泊環境、グリーンエリアの有無、グリーンアクティビティの有無、企業の社会的責任の13項目で、監査役が現地を視察し、取り組み状況を定量的に評価する。評価結果を判定するのは公平性を保つために設けられた第三者機関である。認証の有効期限は１年間のため、継続を希望する場合は更新手続きを行う必要がある。

　グリーンキー認証の取得は、サステナビリティへの取り組みが加速するだけでなく、環境に配慮した観光をしたい人々のニーズを満たすことにもつながるため、ホテルやレストランを選ぶ際の一つの目安として活用されている。

　明神館は創業1931年、標高1,050ｍの国定公園の森に佇む一軒宿。周囲の深い山は年間を通して冷涼な空気に満ち、隣接する川のせせらぎに心洗われる和のウェルネスリゾート。温泉付で自然と一体化した客室や自然との共生を図った多彩な施設が用意されている。料理は自家農園で育んだ有機野菜など地産池消のエスプリに満ちたメニュー。マクロビオティック料理を専門とする田邉真宏総料理長による信州の食材をふんだんに利用したフレンチと松本の発酵食文化を取り入れた日本料理が話題を集めている。室内空間には空気を浄化する土壁や無垢材のフローリング、リネンにはオーガニック素材を使用している。

　また、谷川のせせらぎが聞こえる山あいの広大な敷地に位置する別邸仙寿庵は、季節ごとに表情を変える名峰谷川岳の眺望が楽しめる静謐の宿。和の趣とコンテンポラリーな雰囲気が見事に調和した趣向異なる部屋には源泉掛け流しの温泉が楽しめる露天風呂が用意されている。食事は料理長が丹精込め創作和食料理。山の幸や川の幸、上州牛などの最良の食材を、最高の状態で提供している。食品ロスの削減においても月ごとに廃棄量の目標値を定めるなど積極的に取り組んでいる。

　クラブツーリズムでは、「上質な夫婦旅」と題して、ルレ・エ・シャトー＆グリーンキー加盟の明神館と別邸仙寿庵に宿泊する３日間のツアーを販売している。2024年９月４日、名古屋発の特急しなのグリーン車で出発し、一泊目は明神館、二泊目は別邸仙寿庵に宿泊。上高地をはじめ黒部峡谷・大杉谷とともに三大峡谷の一つとして知られる「清津峡」、旧軽井沢などのエクスカーションも用意されている。それぞれの自然環境に身を委ねながら安心・安全な滞在を満喫する、まさにサステナブルツアーだ。参加がご無理ならば、ご自身でツアーを組み立てることもおすすめである。

　５つ星の宿にもサステナブルツーリズムに適した宿が多い。日本独自の宿泊施設品質認証制度として注目されているのが「サクラクオリティ」である。世界中の旅行者に質の高い日本の観光サービスに関する情報提供を行い、安心で快適な旅行を楽しんでいただくための仕組みで、一定の基準を満たし、厳正な審査を経たサービスのみに与えられるもので、認証された施設には桜をモチーフとしたマークが与えられる。５つ星の宿でサクラクオリティ認証を受けた宿は2024年６月現在で21軒。そのリストをここにご紹介しておきたい。