特集
青空茶事と
茶輪観光
嬉野温泉
嬉野市には嬉野茶の楽しみ方として「ティーツーリズム」という体験が用意されている。見渡す限りの茶畑の中に作られたオープンエアの茶室「天茶台」を舞台に、お茶のエキスパートである生産者が白装束に身を包み、自らお茶を淹れて客をもてなす1時間ほどのセレモニーだ。構成は三茶二菓(3杯のお茶と2種の菓子)が基本で、紅茶、抹茶、緑茶とお茶との相性を吟味して厳選した地元パティスリーのお菓子を楽しむ。生産者が語る嬉野茶の歴史や想いを聞きつつ、心を込めて丁寧に淹れたお茶の味わい深さは、その非日常なロケーションや舞台設定と相まってよりいっそう際立つ。天茶台から見渡す嬉野の景色もきっと心に残ることだろう。
観光がてらのお茶体験なら、嬉野の見どころを自転車で巡るショートトリップ「茶輪」。自転車のレンタルとお茶葉専用ボトルがセットになっていて、市内にある茶葉ステーションではおかわりのお茶も用意されている。
泊まるならココ
・先進的でユニークな取り組みが注目の宿『和多屋別荘』
・100年に及ぶ歴史を持つ老舗旅館『大正屋』
・全室温泉が楽しめる『萬象閣敷島』
シュガーロードと
砂糖菓子文化
江戸時代に整備された長崎街道は小倉から長崎に至る全長228㎞、25宿を結ぶ道。ポルトガル船の来航により開かれた長崎にはポルトガルや中国、オランダから膨大な量の砂糖が運ばれている。当時の砂糖は幕府直轄の長崎会所で売買され、大坂商人を経て全国各地に運ばれるのが正規ルートだったが、長崎街道沿いの各藩は「こぼれ砂糖」と呼ばれる非正規ルートの砂糖を売買するようになり、広く流通されるようになった。長崎街道が後年、シュガーロードと呼ばれるようになった由縁である。
当時、ポルトガル人宣教師たちののど薬だったのがハッカの種を入れた金平糖。宣教師ルイス・フロイスが献上し織田信長が初めて口にした南蛮菓子が金平糖であり、信長はいたく気に入り、ガラス瓶に入れ眺めては口にしていたと記録に残る。長崎銘菓のカステラも宣教師から伝わったもので、当時はコッペパンのような形だった。多くの砂糖が輸入されるようになると和菓子職人たちが砂糖や水飴の分量を増やしたり、卵を泡立てたりするなどそのレシピに様々なアレンジを加え、現代でいうオーブンのような「引き釜」というものも考案。ふっくらしているのにしっとりと甘い長崎名菓「カステラ」へ進化させた。和菓子職人たちのそうした工夫や知恵により街道沿いに西洋・中国を起源とする豊かな菓子文化が花開いていった。ちなみに九州の醤油が甘いのも甘い味付けを好む食文化が根付いたからだという。
例えば嬉野の「塩田津」は長崎街道の宿場町で、当時、菓子屋、飴屋、餅屋といった砂糖を使用する店が8軒あったという。代表する和菓子が「逸口香(いっこうこう)」。中国山西省の空心餅を原形とする、中が空洞で皮の内側にはねっとり黒糖がはりついた珍果だ。嬉野にはさらに、煮詰めた砂糖を菓子型に流し入れて固めて彩色した「金花糖」や、熱燗の日本酒に砂糖を入れた「砂糖酒」なども民族技術として残る。シュガーロード全域では小城羊羹や丸ボーロ、タルト、砂糖菓子と飴細工を組み合わせた寿賀台などもあり、行く先々で様々な砂糖菓子と出会う機会があるはずだ。詳しくは日本遺産「砂糖文化を広めた長崎街道」で紹介されている。
種採り野菜、ゴルフ、温泉…
島原を堪能し尽くす
雲仙温泉
雲仙には地域の風土を記憶し守り継がれてきた個性豊かな野菜がある「種採り野菜」と呼ぶ。例えば、やわらかい肉質と甘みが特徴の「黒田五寸人参」は人参特有の臭みがなく、みずみずしく重層的な味わい。ほんのり苦味があり、クセがなく茹でると甘味が出る「雲仙冬菜」。煮崩れしにくいので、おでんや煮物にも合う鮮やかな赤紫色の「横川つばめ大根」など。口にすれば力強い生命力を感じることだろう。
明治から昭和初期にかけて一大避暑地として人気を博した雲仙。雲仙ゴルフ場は大正2年に開設された日本最古のパブリックコース。鳥たちのさえずりも聞こえてくる老舗コースで爽快なひとときはいかがだろう。時間があれば島原観光へも。壮麗な島原城の白亜五層天守閣は一見の価値あり。その西側には長さ400mほどの武家屋敷が続いている。温泉好きなら、肌のクレンジング効果のある島原温泉や保湿効果のある小浜温泉もめぐれば美容効果も期待大。入浴後はくれぐれも身体に付着した温泉成分を洗い流さないように。
泊まるならココ
・自噴する4種の源泉を堪能『ゆやど雲仙新湯』
・種採り野菜の美食が楽しめるモダン宿『雲仙福田屋』
・水と緑に囲まれたリゾート『東園』
・景勝麗しいモダンでシックな宿『雲仙宮崎旅館』
湯にも地獄の物語
ここは夜の雲仙地獄。青白く灯る提灯を下げ、恐る恐る歩きながら感じるのは噴き出す高熱蒸気と硫黄の香り…。案内してくれるのは着物姿のおどろおどろしい女性ガイド…。ベンベン、ピロピロ、闇夜に怪しげに響く三味線の音、笛の音…。雲仙ならではの特別体験「湯にも地獄の物語」。雲仙地獄にまつわるキリシタン秘話、妖怪話、罪深い話など、ちょっと怖くて摩訶不思議な4つの話を聞きながらめぐる約60分のナイトツアーだ。
雲仙地獄には大叫喚地獄や旧八方地獄、清七地獄など30余りの地獄からなり、そのいずれもに哀史や伝説が残る。地獄谷を一望する高台には、この地で拷問によって殉教した33人のキリシタンを称える碑や十字架も立っている。例えば、お糸地獄。お糸とは1800年代末期に島原城の近くに住んでいた裕福な女性。愛人の助けを借りて夫を殺したかどで有罪となり死刑判決を受けた。その死刑執行の瞬間、地の底からぶくぶくと音を立てて「地獄」が現れたという…。もうこれ以上はここに書くまい、書けまい。歩いてのお楽しみだ。
開催期間は2027年2月28日までの第2・第4土曜日。「逢魔が時(出発時間)」は3月から9月までは19時半から。10月・11月は18時から。6月・12月~翌年2月は開催されないのでご注意を。料金は1人3000円。「逢魔が場所(集合場所)」は、雲仙お山の情報館別館隣りの50周年広場。最後に雲仙観光協会から。「今宵、地獄でお待ちしております」とのこと。
