特集
雲海に浮かぶ
高原リゾート
赤倉温泉
妙高高原温泉郷では最も大きく、江戸時代に開湯した温泉地。妙高山中腹から湧き出す北地獄谷温泉は1分間に約3000リットルと新潟県随一の湯量を誇る。泉質も硫酸塩泉と炭酸水素塩泉を併せ持つ美人の湯として知られている。その温泉と標高約1000mからの絶景を楽しめるのが1937年創業の赤倉観光ホテル。大蔵財閥が上高地帝国ホテル、川奈ホテルに続いて建てた日本の高原リゾートの草分け的存在で、気品ある空間と源泉掛け流し温泉で人気を呼ぶ。注目を浴びているのが「雲海に浮かぶアクアテラス」。雲海が浮かびやすい初夏や晩秋の頃にはその絶景をプライベートに楽しむことができる。
泊まるならココ
気品と歴史に満ちたクラシカルホテル『赤倉観光ホテル』
暮らしに根付く
鮭文化
瀬波温泉
「鮭・酒・人情(なさけ)のまち」として人気の村上市。特に鮭は平安時代に京都の王侯貴族に献上されていた記録が残る。海に下った鮭の稚魚は3~4年荒波にもまれ成魚となり、1万数千㎞もの旅をして秋、産卵のためにふるさとの川に戻ってくるが、鮭は臭覚で自分の生まれた川固有の有機物・無機物を識別する能力を備えているとか。江戸時代にその回帰性を発見したのが村上藩の武士で、三面川に産卵に適した分流「種川」を設けて産卵を助けることで鮭の回帰を促した。いわば世界初の「自然ふ化増殖システム」だ。
100種類以上ある鮭の調理法の中でも一番人気が商家の軒先で見かける「塩引鮭」。材料は鮭と塩のみ。適度な低温と湿度、添加物を一切使わず自然の力だけで仕上げる究極のスローフードで、適度な低温と湿度、北西の潮風が運んでくる塩分や乳酸菌などが絶妙に組み合わさって低温発酵を促し、鮭の旨味を極限まで引き出している。新巻鮭との決定的な違いがそこにある。古来、村上では塩引鮭は大晦日の主役の年取り魚として食されてきた。しかし誰もが好きな場所を食べられるわけではなく、特に一匹から2切れしか取れない部位カマは「いちびれ」といい、稚魚の頃から死ぬまで止まることなく動きつづけてきた生命力の象徴として一家の主人だけが食べることを許されてきた。そこから尾に向かって長男、次男……と、食べる部位が厳格に決められていたそうである。今も、鮭は暮らしに欠かせない魚で、集まりがあれば各家庭自慢の鮭の酒びたしを持ち寄って味比べをするなど食文化として息づいている。その甘辛い鮭料理に合うのが地元の銘酒、辛口の「〆張鶴」と「大洋盛」。酒どころの越後、地酒が並ぶ酒店の暖簾をくぐれば人情あふれる店員さんにも出会える。
泊まるならココ
絶景の夕陽を眺める波打ち際の宿『大観荘せなみの湯』
漢字一文字名の
街歩きスポット
月岡温泉
月岡温泉街をそぞろ歩くと漢字一文字の名の店が随所にあることに気づく。「蔵」プレミアム日本酒、「旨」ご飯のおとも、「田」米菓、「香」ワイン、「米」米粉のスイーツ、「実」スムージーとジェラート、「甘」チョコレート、「和」和菓子、「煎」コーヒーとカヌレ、「恵」ドライフルーツ、「餡」新感覚のあん菓子、「匠」新潟工芸、「TSUKIOKAドーナツ」。カギカッコ内が店名で、そこで販売されている商品はいずれもお国自慢の品々だ。空き家や遊休地の再生によって新たな魅力創生事業が進む月岡温泉では、毎年1店舗のペースで出店が続いている。このプロジェクトを主導する「合同会社ミライズ」は、月岡温泉の若手経営者の共同出資で設立された運営会社。新潟ならではの素材にあらためてスポットを当て、オリジナリティあふれるコンセプトを持った店舗として蘇らせることで月岡温泉の新たな景観の再生とにぎわいの創出に取り組んでいる。
泊まるならココ
・氏香に託したおもてなし宿『ホテル清風苑』
・硫黄含有量日本一の湯宿『白玉の湯 泉慶』&『白玉の湯 華鳳』
日本のミケランジェロ
石川雲蝶
越後湯沢温泉
JR上越線で越後湯沢駅から2駅目の越後中里駅のほど近く。ぜひ訪ねてみたいのが「瑞祥庵」。その楼門に安置されているのが一対の仁王像。作者は幕末から明治初年に越後で才腕を振るった石川雲蝶。破天荒な人柄だったが、ノミを握れば神業的な作品を手掛けたという。雲蝶の魅力は重厚感と迫力がある一方でモチーフをやさしく表現する繊細さと彩色にあるとされ、「日本のミケランジェロ」とも称されている。作品も木彫りにとどまらず、石彫刻や絵画、寺院の設計などマルチな才能を発揮している。
時間があればとりわけ大作が多く残る魚沼市の2寺、「永林寺」「西福寺」へも。雲蝶の100を数える作品が残る永林寺にあってひときわ目を奪うのは本堂西側を飾る欄間の天女。「目細、鼻高、桜色」とされた江戸の美人の条件に合ったモデルは、雲蝶が思いを寄せた魚沼の女性だという。また、西福寺で見るべきは圧倒的な立体感の天井彫刻「道元禅師猛虎調伏の図」。雲蝶の終生の大作といわれ、完成当時のままの鮮やかな色が今も残されている。表現されているのは修行中の道元禅師が虎に襲われそうになった際、投げつけた杖が龍に姿を変えて虎を退治するという物語。透かし彫りによる龍の鱗の緻密さや虎の毛並みの質感がすばらしく、亀や鯉、猿、雀などの小動物も作品の随所に彫り込まれている。マイカーなら関越自動車道湯沢ICから魚沼ICまで30分ほど。必見である。
泊まるならココ
里山の大自然を展望する『水が織りなす越後の宿 ホテル双葉』
「地炉」で味わう
温泉ローストポーク
松之山温泉は火山を熱源としていないのに、90度を超える高温と高圧力で湧き出す世界的にも珍しい温泉。約1200万年前の古代海水が閉じ込められた地層から湧出している。訪れたいのが観光客と地元住民の交流の場になっている体験施設「地炉」。足湯と顔湯も無料で利用できる。「ひなの宿ちとせ」の足湯場にある「高温温泉釜」で作られているのが十日町のブランド豚「妻有ポーク」を温泉熱で調理した「湯治豚」。柔らかくジューシーな旨味がぎっしり。一般的な豚肉の約10倍のビタミンEが含まれているため抗酸化作用による「熟成」が促され、より一層のやわらかさと甘みの広がりを感じる逸品だ。
