関ヶ原の合戦前年、1599年創業の老舗温泉宿、望雲。江戸時代は草津の隆盛を支えた存在だったのだろう。十返舎一九は「上州草津温泉道中」に宿の繁昌ぶりを書き、七代目館主と旧知の間柄だった俳人一茶は湯のすばらしさを「湯けむりにふすぼりもせぬ月の貌」と詠んでいる。宿には2つの源泉を引き込んだ6つの源泉掛け流し風呂が待っている。

湯屋の風情がすばらしい。西の河原源泉が注がれた『西の湯』では東屋風露天風呂と美しい木組みの内風呂に目を奪われる。宿自慢の庭園を眺める『万代の湯』も味わい深い。しゃくなげが咲き競う5月の頃はどんな景色だろう。内湯と露天風呂に掛け流されているのは強酸性の万代鉱源泉で、殺菌力の強い草津温泉らしい湯だ。そして2つの源泉の違いを確かめることができるのが端正な趣の『遊山の湯』。西の河原源泉と万代鉱源泉が並びの浴槽に掛け流されている。湯殿は男女入替制。意のままの温泉三昧が叶う。

見事な木組みの館内は活け花や野の花に彩られたモダンな佇まい。人気は『雲松庵』の露天風呂付客室。和室に次の間、シャワールーム、庭眺めのウッドテラスなどを備え、庭園へと続く露天風呂には西の河原源泉が滔々と掛け流されている。