湾の入口が狭く、風による波の影響を受けにくい七尾湾は時として幻想とも思えるすばらしい情景を描き出す。加賀屋で心静かな滞在を望むなら、穏やかな七尾湾を眺める海側客室がいい。『雪月花』『能登渚亭』『能登客殿』『能登本陣』の4棟からなる加賀屋。中心に位置するのが『雪月花』で、加賀屋が誇るすばらしい客室が用意されている。15～17階は特選階。能登・加賀の郷土料理を心ゆくまで満喫できる窓際ダイニングテーブルが置かれた高品位空間である。海側客室ならば波さざめく湾のパノラマが美食のひとときを伸びやかに演出してくれることだろう。

窓からの眺めがさらにすばらしいのが賓客のための特別階、18～20階の『浜離宮』である。「海に浮かぶ浮舟御殿」とも称されるように眺望はまさに絶景。能登島をいだく七尾湾が眼下に開けている。窓辺に立てば海に浮かんでいるかのような感慨さえ抱く。室内は凜と、全室純和風客室の加賀屋ならではのしつらい。さりげなく飾った花々や掛け軸などで四季を表現した室礼、伝統工芸や美術の粋を集めた調度…、まさに日本の美を見る思いである。

18・19階が貴賓室。最上階20階には贅を尽くした迎賓室、天皇皇后両陛下がご宿泊された「天游」と「白韻」が優雅さひときわの空間に絶景を添えて待ち受けている。浜離宮宿泊者には専用個室食事処「茶寮」での美食に加え、光や波さざめく七尾湾を見渡す専用スカイラウンジ「雪月花倶楽部」がプレミアムとして用意され、至れり尽くせりである。浜離宮は専用カードでしか立ち入れないプライベート空間。さながら海に浮かぶ別荘と思ってもらっていい。

七尾湾は天然のいけす。潮流や立山連峰から流れ込む豊富なミネラルがプランクトンを育み、良質な漁場を形成している。港には地元で言うところの旨いもの「まいもん」が揚がる。加賀屋で堪能できるのは、春はいいだこ旨煮、能登のふぐ料理、夏は鮑や活き車エビ、岩蛸洗い、秋は焼き松茸や土瓶蒸し、のどぐろ酒蒸し、冬は鰤のお造りや待望のカニ料理、あんこう鍋などの美食揃え。能登と加賀伝統料理を継承した献立に加賀屋が培った和食調理技術が冴え渡る。夕食はプランに応じて食事処または部屋食で満喫する。大型の宿だけに出来たてを届けられるよう、配膳を乱さぬよう、客室係に運搬の負担をかけずおもてなしに専念できるよう、各館への料理搬送システムが導入されていることも特筆しておきたい。

多彩なお楽しみ処が揃う加賀屋。夜の憩いもまた楽しみは尽きず、くつろぎを強く印象づける。銘店めぐりやショータームには全長80ｍ、千坪ものエンターティンメントゾーン「錦大路」へぜひ。天女が舞う輪島塗の大パネルや壁一面の加賀友禅、九谷焼や輪島塗、象嵌、金箔など伝統工芸品や美術品を眺めるガイド付ツアーもぜひおすすめしたい。

「加賀屋がなぜ日本一といわれるのか理由を知りたい」とやってきたお客様が、滞在に心から満足して「また来たい」と笑顔で帰途に就く。その答えを挙げるとすれば「人」である。観光には風物と産物、そして人物の”三物“があるというが、加賀屋のおもてなしを担うのは何をおいても「人」なのだ。加賀屋には「客室係の声はお客様の声」という哲学があり、お客様とパーソナルに接する客室係を頂点に、宿全体に流れるようなコンビネーションが確立されている。

出立の際には「ご自宅までのご無事を祈って」お客様を見送っている。お客様の笑顔が加賀屋のおもてなしを物語る。そんなひとこまがこれからもずっと続いていく。