清流長良川の畔、川原町で江戸時代末期、万延元年創業から百六十余年の時を紡ぐ十八楼。ロビー壁面には館名の由来となった俳人芭蕉の「十八楼記」の碑文。敷地内には江戸末期建立の芭蕉の句碑。どちらの碑にも刻まれているのは時を経た今も人々を和ませる長良川周辺の明媚な風光である。館内そこかしこに感じる気品や落ち着きは老舗宿ならではの味わいだ。5月初旬から10月中旬の鵜飼シーズンにはこの地唯一、船着き場への専用通路を持つ宿として、ひときわの賑わいと情感に包まれる。

湯殿も長良川の眺めとともにある。町屋造りの『川の音』は風雅漂う和風風呂で、長良川を一望する木曽石の露天風呂、ジェットバス、薬草風呂、シルキーバスなどを備える。スパリゾート風の『川の瀬』の露天風呂では川風に吹かれながらの湯浴みが叶う。水中照明に浮かび上がる夜の風情も幻想的だ。薬草風呂とミクロの泡のシルキーバスも併設されていてリフレッシュ感もひとしおだ。
郷愁を誘うのが川の瀬と空間続きの『蔵の湯』。明治時代の材木商の蔵を蘇らせたモダンかつ重厚な湯船に注がれているのは茶褐色の濁り湯。良質な鉄分やラドンの成分が旅の疲れを癒してくれる。

長良川への眺めとともにある客室。ぜひ泊まってみたいのが露天風呂付特別和洋室『湊 minato』だ。12畳リビングとベッドルームを備えたモダン空間。ワイドな窓いっぱいに長良川の景観が広がっている。滔々とゆく清流と湯に憩うやすらぎの時間は何とも得がたい。露天風呂付の川側和室や和モダンツインもお勧めだ。

料理は日本料理専門調理師、調理技能工、国際薬膳食育師などの資格を持つ料理長が長良川の伏流水や地場の野菜など厳選した食材を用いた贅沢な和食会席料理を堪能する。匠の技と誇りを込めた飛驒牛料理は絶品だ。十八楼では夕食後に観覧船にて宮内庁式部職鵜匠と鵜が織りなす「ぎふ長良川鵜飼」を楽しめる。千三百年以上かかさず開催され続けてきた伝統行事。川面に揺れる篝火は、信長公や芭蕉も魅せられた光景だ。